ビフォーアフター・アフター。

2年くらい前に買ったブラックジーンズを全く履いていなかった。
似合わないと思っていたからだ。
じゃあ、何故買ったのか。
それは知らない。
とにかく、タンスの片隅にあるということだけが、頭の片隅にあった。
そして、時期が来た。
「グレーのパンツが欲しい。」
時間を持て余している僕の脳は、グレーのパンツを買うことより、あいつをグレーにすることを選んだ。
まずは数度洗濯してみた。
特に変化なし。
色を落とすという目的に対し、僕の次の選択肢は漂白しかなかった。
お風呂に水を少し溜めて、キッチンブリーチをドボドボと入れ、攪拌。
斑にならないよう全体が浸かるように、その中にブラックジーンズを滑り込ませた。
しばらく放っておいて、見に行くと、あまり変化がなかった。
キッチンブリーチが足りないと判断し、追加投入して攪拌。
脱色時間も必要かと思い、日用品を求めて近所のスーパーや薬局に買い出しに出かけた。
30分ほどして帰宅し、湯船を覗くと、茶色の液体に疲れきった下半身が沈んでいた。
茶色の水を排水し、シャワーの水で洗い流した。
僕はグレーのパンツが欲しかった。
そこには、上品なラクダみたいな色をしたパンツがあった。
黒は脱色すると、グレーではなく、上品なラクダ色になる。
時間を持て余している僕の脳は、上品なラクダ色のパンツを染めること選んだ。
小学生の時、Tシャツに墨汁がついて、薄いグレーの斑点が消えなかったことを思い出した。
100円ショップに出かけた僕は、墨汁を買った。
お風呂に少し水を溜めて、墨汁をドボドボと入れ、攪拌。
斑にならないよう全体が浸かるように、その中に上品なラクダ色ジーンズを滑り込ませた。
しばらく放っておいて、見に行くと、ラクダが墨を順調に飲んでいた。
色落ちを計算していた僕は、そいつを軽く水で洗い流し、数日間干しっぱなしにした。
カラカラになったそいつを洗剤を使って手洗いした。
洗濯機で洗うと、洗濯槽に墨汁がつくと、頭が働いた。
洗剤で洗い流されたそいつは、僕を驚かせた。
元のあいつより、数段黒かった。
今、引き算も足し算もできない僕の脳は、グレーのパンツを買うことを考えている。

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