感じる人。

彼女はとても感じやすい人だ。

彼女はいつも会社の話をする。

俺に任せろ感が強い先輩、褒められたい感溢れる後輩、責任とりたくない感が見え隠れする上司、早く帰りたい感丸出しの同僚が、主な登場人物だ。

彼女が言うには、みんな優しくて、とてもいい人らしい。

ある日、ベタなドラマに影響された感を滲ませながら颯爽と出社してきた先輩に、「何かいいことあったんですか?」と彼女が聞くと、待ってました感を隠しきれない表情で「運命の出会いをしたかもしれない。」と言うので、詳しく話を聞いてみると、どうやら前の晩に立ち寄ったバーで女性と知り合い、週末にデートをする約束をしたということだった。

一緒に写真を撮ったと言うので見せてもらうと、お店感がすごい女の子が写っていたので、あまり入れ込まないよう先輩に忠告しようと思ったが、「あの子になら騙されてもいいんだ。」と言い出しかねない感がしたので、それとなく注意を促すに留めたらしい。

別の日、手詰まり感が隣の席から漂ってきたので、彼女は後輩に声をかけた。

いつもだと、自分の仕事が片付いた瞬間に業務に全く関係のない話をしてきて、「もう終わったの?」と聞くと、ドヤ感たっぷりに軽く頷く後輩なので、彼女は心配になったらしいのだ。

後輩は「大丈夫っす。」と言いながら、問題ありません感を必死で出そうとしている感が伝わってきたので、彼女は「私、今悩んでるんだけど、聞いてもいいかな?」と切り出し、後輩が答えやすい質問をした。

すぐに適切な答えをくれた後輩に、彼女が「ありがとう。」と言うと、後輩は「僕も質問あるんですけど、いいですか?」と、仕事上のアイデアに困っていることを話してくれた。

彼女が提案をすると、僕もそう思っていたんですよ感を少し含めながら同意してくれたらしい。

また別の日、朝からずっと、かまってほしい感を放ちまくっている上司には一目もくれず、彼女は自分の仕事に没頭していた。

またまた別の日、それとなく探ってる感のある同僚と、彼女は休憩時間に女同士で近況報告のようなことをした。

彼女は僕と付き合っていることを、この同僚には以前から話している。

この同僚が、隠れて上司と付き合っていることに彼女は随分前から気づいているが、知らないふりをしている。

結婚の話題になった時には、お互い「まだまだ先かな。」なんて言っていたが、同僚からはもうそろそろ感がひしひしと伝わってきたという。

「そうなんだぁ。」と、いつも通り彼女の話を聞いていた僕に、「あなたって、本当に鈍感ね。」と彼女は言った。

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