こび太とのべ太。
彼の名前は媚備こび太。
小さいころから、周囲の人たちに嫌われないように、媚び媚びと育ってきた。
そんな彼のチャームポイントは、何人たりとも不快にさせない媚びた前髪。
そして、社会人になってからは僅かばかり残っていたプライドも見事になくなり、まさに媚び盛り。
接する人すべてに媚びを売り、媚びしろを見つければ、とことん媚びていく。
だが、ある時、彼は媚び悩むことになった。
それは、同僚から辛辣に批判されたからだ。
その同僚というのは、同期入社の述部のべ太。
彼は幼い頃から口が立ち、述べ述べと育ったために、常に自分の主張を述べてきた。
社会人になっても変わることはなく、むしろ目上の人が沢山いる中で全く臆することなく、述べしろを見つけては意見をどんどん述べ、まさに述べ盛り。
そんな彼はいつも口を尖らせているせいか、何もしていなくても、「また鼻の下が述べている。」と揶揄されることもしばしばだった。
こび太が人から嫌われることを恐れて媚び媚び生きてきたのに対し、のべ太は全くそんなことも気にせずに述べ述べ生きてきた。
「君たち二人はとても極端だよ。ちょうどの二人の中間ぐらいの人が良いと思うんだけどな。」と言ってみたところ、「そんなことないと思います。」と反論したのは、のべ太ではなく、意外にもこび太だった。
常に相手に媚びてきたこび太が、媚び悩んでいたせいか、珍しく自分の意見を言った。
すると、常に相手に述べたいのべ太が、珍しく何も述べずに、こび太の意見に対して無言で頷いた。
正反対の性格の二人の意見が、妙なことに一致したのだった。
それ以来、彼らは仲良くなったかと言えば、そうでもない。
相変わらず、媚びたり、述べたりしている。
はぁー、二人とも伸び伸びと、もっと気楽に生きればいいのに、僕みたいにさ。
さてさて、昼寝でもしよーっと。
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