時任さんのお仕事。

誰も気付いてはいないが、時に私は時間を止めている。

さっきそこに置いたはずの物がなくなっていたり、時ならず意外なところから出てきたりすることがあると思うが、それは私の仕業だ。

ほんの悪戯心だ。
時として、時間の経過が早く感じたり、遅く感じたりすることがあると思うが、それも私の仕業だ。
ほんの遊び心だ。
時たま私は時間を操作している。
しかし、そんな私も時間を戻すことはできない。
私は何時も前向きなのだ。
だか、時折思うことがある、私は世界を救えるだろうかと。
かつて、この時間を操作する能力を使って、事故を回避したことがある。
しかし偶然にも時同じくして、近くの場所で別の事故に遭った人がいることを、後になってニュースで知った私は深く深くその事を思慮した。
そして思ったのである、その人は可哀相だなと。
私は保身で精一杯。
他人を救う余裕など全くない。
まして世界を救うなどというのは大それたことだと思う。
もし、たまたま私の時間操作によって難を逃れた人がいたとしたら、それはその人が幸運だっただけなのだ。
時々、己を過剰評価し、実を結ばないことに自分自身を苛むことがあるだろうが、それは単なる自惚れなのだ。
私は今を時めく救世主や、時の革命家たちには到底及ばない人間であって、この能力を効果的に利用するアイデアも持ち合わせてないのだから、そんなことは気にする必要はないのである。
しまった、時を忘れてボヤいていたら、瞬間移動マジックのアシスタントをする時給820円のアルバイトに向かう時間だ。
ではまた、時を見て。

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