余命宣告。

ある日、死神がやってきて、彼に余命を告げた。
残された時間は44年。
彼は戸惑った。
かなり時間に余裕がある。
死神によれば、彼の死因はガン。
それを知った彼が、手遅れになる前に病院に行くと言うと、死神は「それはあきませんですわ、狡いですわ、そんなん。…あの、やっぱり今の忘れてくれます?事故死、事故死、不可抗力的なやつですわ。」と明白にごまかそうとした。
この死神、何故か関西訛りで、見た目は中年の普通のオジサン。
怪しく思った彼が、不意に飛び掛かると、彼の体は空を切った。
死神は、これ以上ないぐらいのドヤ顔をしていた。
どうやら人間が触れることは出来ないらしい。
何故関西訛りなのかを聞くと、前に担当した人間が関西人で、それに影響されて、と少し嬉しそうに答えた。
宣告が早過ぎないかと聞くと、その関西人に44日前に余命宣告をした時、もっと早く来てくれたら良かったのにとクレームを言われたからだと答えた。
さすがに44年前に来るのは早過ぎると彼が言うと、小鼻を掻きながら、いまいちピンときてない表情をしていた。
彼は他にも聞きたいことが沢山あったので、色々と質問をすると、死神は何でも答えてくれた。
余命宣告をされるのは無作為に選ばれた人だけで全員ではないこと、死神は大勢いること、死神として生まれ育っていつかは死ぬこと、自分たちの余命は分からないこと、人並みに恋はすること、死神の世界は争いがなく平和なこと、暇な時はUNOをやっていること、日本のアニメはやはり人気があること、人見知りするタイプもいること、4という数字から死を連想する日本人の感覚には便乗していること、余命宣告は命を大切にして欲しいという願いからくる自発的な行動であること、それを懐疑的に思った時期もあったが今は迷いがないことなど。
彼と死神は夢中になって話し合った。
後に彼が成し遂げる大偉業も、この“親友”との出会いから始まったことなのだが、それはまた別のお話。

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