勝手に宣伝。

バイト先のネットカフェに外国から来たビジネスマンが夜中にやって来た。彼は全く日本語が喋れず、当然の様に英語で話しかけてくる。明日プレゼンがあって、資料をカラープリントしたいと、USBメモリーを手に持っている。肌の色は真っ黒で、白い目がギョロっとしている。東京都の条例で、ネットカフェのパソコンは身分証がないと利用できない。犯罪予防のため。何故身分証を見せないとダメなんだと、そんなことを知らない彼は怒っていた。プレゼン準備に焦っていたからか。ただ印刷したいだけなんだと、粘り強く言ってくる。本当なんだろう。疑われてると嫌な気分にもなる。もしかしたら、外国人だから、こんな扱いをされて差別されているのかとも思うかもしれない。そういう経験をしたことがあるかもしれない。でも、パスポートがないと無理だと入店を断った。怒りと悔しさの表情でこっちを見ながら、去っていった。しばらくして、パスポートを持って、戻ってきた。まだ文句ありげな顔で。申込用紙を記入させて、パスポートを提示させ、ようやく入店。ほとんどのネットカフェでそうだと思うが、それぞれ自分のブースのパソコンで、IDなどの設定をして、共用のプリンタで印刷をする。さすがにその説明を英語ですることが出来ず、結局彼のブースについて行って、どのファイルを何部印刷するのかを聞いて、全行程を僕がやった。彼の目的は印刷だけで、インターネットもしていないし、ましてパソコンに触ることもなかった。そしてブースでの設定が終わり、プリンタのあるところへ移動した。印刷にはお金がかかることを説明し、お金を出させた。彼は小銭がなく、千円札を僕に渡した。彼を置いて、僕はレジに両替に行った。僕がちゃんと千円分両替してきたかを彼は確かめなかった。いくつかある文書の最初の一枚が印刷出来たとき、ようやく彼は笑顔を見せた。いくつか印刷している間、彼は僕の写真を撮りたいと言って、嬉しそうに写真を撮りはじめた。さっきまで怒っていた彼が嬉しそうな顔をしていたので、僕も嬉しくなってしまったのか、「その写真を明日のプレゼンで使ってもいいよ。」と冗談も言った。二人で笑っていた。結局印刷も全て僕がやって、千円のうち余ったお釣りを彼は確かめもせずに受けとった。もちろん僕は一切ごまかしていないし、ごまかそうと思いもしなかった。彼がどこのタイミングからか僕を信じてくれてたと思う。全部終わって、フロントに移動し、ブースの利用代を払ってもらった。彼は、印刷した書類を入れるクリアファイルを求めてきた。元々そんなサービスはないし、厚かましいと思ったけど、社員さんにお願いして、事務所で使っているファイルを1つ彼にあげた。彼は満足して、ありがとうと言いながら、僕と握手をして帰っていった。でも、もし忙しいときに彼がやって来ていたら、あんなことしなかったし、適当に追い返していただろう。 拙い英語でも話せて良かったと思った。


人と人が繋がる。

事と事が繋がる。

それぞれの行動や欲望、些細なことでさえも。

異文化や異国の人を理解できない、不気味で、怖いとさえ思う。

でも、まず何を思っているか、何を考えていのるか伝えないと。

正しいとか間違ってるとかは後にして。

土地や時代によって、価値観や尺度は違う。

話をしよう。

世界65億の人と。

話をしよう。

まずは家族や友人と。

 

映画『BABEL』

宜しければご覧下さい。